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花影坂
四丁目

祭野

制作曲の歌詞とインストのまとめです。
動画で使用させて頂いたイラストで公開許可を得ているものも展示しています。

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ツガイアゲハ

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ツガイアゲハ


昏い夜の町を駆ける 君の腕を引いて遠く
淡い花の吹雪 まるで僕等を隠す様だ

繰り返す罪に赦しは要らない
色ふ花の香を 纏い宵時雨

舞い踊る烏と番いのあげは
僕等を導く先に
黒い羽 甘い蜜 鳥篭の中へ

零れ行く滴に想いを馳せて
飲み干して終えば善い
君が居て呉れるなら 答も見えるだろう


夜が明けた森を駆ける 君の腕を引いたまま
咽ぶ声に立ち止まれば 「大丈夫、もっと遠くへ」と笑う

篭の中の世界 憐れな蝶々
生かすも殺すも お気に召す侭に

舞い踊る烏と番いのあげは
溶けて落ちる蝋の花
灼けた羽 焦げる匂い 陽炎 揺り揺られ

求めては与えて 奪って埋めて
背徳 暴く感情
二人なら何処迄も 堕ちても構わない


禁じた蜜を求め 楽園探し惑う
番うあげはの群れが 飛び交う


舞い踊る烏と番いのあげは
僕等は行き着いた先で
夢を見て 明日を語り
互いの存在を憂い慈しみ嘆き生きてゆく

交差する視線が熱を孕んで
全てを燃やそうとする
永久か夢幻か

君以外欲しくない




ツガイアゲハ / 祭野

生まれ落ちた瞬間から私の運命は決まっていた。

何一つ不自由ない生活は、同時に自由もない。

与えられた洋服を着て、与えられた日々を過ごし。
両親の決めた相手と結婚し、子を産み。

こうして私の生涯は、淡々と閉じてゆくんだろうな、と。
其れ以外の道など想像もしなかったし有り得る筈も無いと思っていた。

―――彼に出会うまでは。


「矢張りお父様とお母様は、認めては下さらなかったですね」

私は口では嘆いたけれど、もう其んな事は然程気には留めていなかった。

何もかも捨てる覚悟を。
揺るぎない決意を疾うに持ち合わせて居たから。

否、決意とは又少し異なるのかも知れない。

「本当に、良いんだね?」

彼の言葉に、私は深く頷いた。

壊れやすくも確かな、唯の、愛。
信じた物は、其れ切りでした。

「もう直に夜が明ける。…急ごう」



初めて会った時は、私にとって彼の存在は異質だった。

今まで出会ったどの人たちにもまるで似つかない。

少しも媚びない、物怖じしない口調。
矢継ぎ早に出てくるお喋りは私の知らない世界の話ばかり。

何時だったか、将来の夢を尋ねられた時。
私が「特に無いわ」と答えると、彼は心底驚いたように目を見開いた。

今度は私が「可笑しいかしら?」と問うと、彼は微かに笑い、自分の夢を語り聞かせてくれた。



両親を裏切るような行為。
勿論、背徳感はあった。

何度も離れようとした。何度も忘れようとした。
然し、感情はいとも簡単に理性を越えて行く。
どんなに固い意思で別れを決めた後でも、ひと度触れてしまえば、

…私達はまた堕ちる。



選んだ道は決して間違いでなかったと思える。
共に生きる苦難なら、彼の居失いどんな常より甘美だ。

見えない枷。罪の意識。
其れを背負ってでも、彼と生きたいと願った。


禁忌の楽園を追い求める番いあげはのように…

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